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「建築学」の教科書

2008/09/02

「建築学」の教科書 という本を読みました。ちょっと前に本屋で見つけて気になっていた本です。

自分は建築を勉強していたわけでは全くないのですが、建築にもっと早く興味をもったらそちらの方向に進んでいたかもなぁと思う次第です。

さて、この本ですが、このコンセプトは「建築」に興味を持った人やこれから学ぶ人に「建築」がどんなものなのかを色々な視点で見せるということのようです。

総勢14名の建築に関わる著名人が、様々な視点で「建築」について語っています。最初に安藤忠雄氏といきなりガツンときます。

建築とは、ある計画概念のもと、さまざまな段階で、全体と部分とのあいだで応答を繰り返し、1つ1つ決定を与えていく作業だと私は考えている。そのとき、まず当初のコンセプトを最後まで貫くのが、難しい。諸条件を整理していくなかで、概念との矛盾、曖昧さが、必ずどこかに現れてしまう。(P21)
安藤忠雄

巨匠だからといってサラッと設計してしまっているわけではなく、建築を共に学ぶ仲間というものがないため、常に1人で考えることが多かったとのこと。

そしてこれはサイト構築についても同じ。最初にコンセプトを決めて、それを貫いていくことは机上ではそう考えていても実際は難しかったりするわけです。

そこで葛藤があり、色々考えたことで出てくる答え。それが大事な気がしています。

古代ローマの大建築家ウィトルウィウスは、「建築を考えるときは用・強・美の関係について考慮すべし」と建築について簡潔に定義を与えている。現代的に言い換えれば、「建築においては機能と構造と美しさという三要素の調和のとれた関係が大切である」と言っているのであり、これに設備を加えれば現代でも成り立つ究極の定義であろう。(P32)
佐々木睦朗

建築について無知な私なのでウィトルウィウスという方は知らなかったのですが、この本では何度も登場する紀元前を生きた巨匠です。

この「強(firmitas)・用(utilitas)・美(venustas)」についてはやはりサイトにおいても同じ。機能が無いサイト、構造がされていないサイト、美しくないサイトはやっぱりどれをとってもいただけない。

どれかだけを実現しているサイトではなく、3つを両立できるサイトを構築することがWebをデザインする人間の義務ですね。

ちなみに「強」を構造と見るのか、建築物としての強さとして見るのかは、また別の方が検証しているのでご興味のある方は読んでみてください。

建築学を学ぶということは、著名な建築家になって、奇妙奇天烈な建築をわれわれの住む生活環境のなかにつくり出し、華やかに脚光を浴びながら、芸術家を気取ることをめざすことではない。われわれの日々生活している環境がどうあるべきか、そのために何を考えるべきか、何をなすべきか、なさざるべきか、深く思索する能力を身につけ、そして実践に移す。これこそが建築学を学ぶ基本的な目的にほかならない。(P226)
山岸常人

これもそのままサイト構築にも言えることでしょう。先日のDESIGN IT!でデザインを行うときには、より大きな部分へと視点を広げるというものがありました。

「サイトが生活の中でどのように使われ、どのように他のサイトに影響を及ぼしていくのか?」これをきちんと考えていく必要があります。

そういった中で、こんな記述もありました。

巨大な建築であれ、使う人がふれ、気持ちがよいと感じるのは、小さな細部からだ。小さな場所が、小さな細部が大事にされなければ巨大な建築は単なる巨大なものとなる。巨大さを感じさせるには、むしろ小さな場所や細部を重視しなければならない。(P145)
松山厳

細かいところにこそ気を使うべきである。これはここ最近よく聞くフレーズです。大きな部分に視点を移しつつも、細かい部分を忘れないようにする。大事です。

そういえば、本日入ったスターバックスコーヒーで、パントリーのドアの前に座っていたのですが、ドアが開くたびに暖かい店内から無機質なパントリーが見えて幻滅…ということがありました。

こういったこともディズニーランドなら起きないのかな…

こうした日本の歴史を振り返ると、なんでも潰して新築するという最近の建築技術、すなわち「直す」ことを忘れた建築技術は、じつは大変危ういものであることがわかる。要するに「新築」することばかりに気をとられていたために、かつてはふつうに復旧できたような簡単な修復すらできず、いたずらに解体を進める結果を招いてしまったのだ。(P263)
西澤英和

ちょっと前のサイトの場合、ほとんどがリニューアル、リニューアルで常にスクラップ&ビルドの世界でした。最近では、少しずつサイト最適化を行っていく方向にシフトしてきているそうです。

これは、日本の良き建築が…ということは全くなく、アクセス解析ツールの性能向上と予算があまりかけらないという部分がポイントのようです。

ということでこの本を通して感じたことは4つ。

  • 建築はそれ単体で考えるものではなく、環境や社会的つながりなども考慮した上で考えるべきもの。
  • 芸術的観点だけではなく「用・強・美」3つを評価する必要がある。
  • 作りだすだけではなく、「直す」という観点を必要とすること。
  • そしてそれら全てはサイト構築に通じる。

といった感じでした。途中建築の難しい話も出てきて全部は理解できない部分もあったものの、それでも、「建築」を知るという意味では非常に役に立つ本でした。


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2 Comments »

  • ふるかわごう said:

    BBCのシリーズ番組『How Buildings Learn』を見ました
    http://blog.iaspectrum.net/2008/09/bbchow-building.html

    なんかこのエントリーとつながるものがあるなと思い、FYIです。

  • あんけい said:

    ありがとうございます!実はHow Buildings LearnについてはIAAJの輪読会に出ようかと思ってたので、知ってました。(確か持ってた気が…)

    でも、もともとBBCの放送だったんですねぇ。とりあえず一通り落として、息抜きに観てみようと思います!