Chipotleのデジタルを利用した顧客体験への取り組み
定期的に実施している様々な企業のデジタルを利用した顧客体験の取り組み事例、今回はメキシカングリルのChipotle(チポトレ)です。日本には未上陸ですが、2023年3月時点で3200店舗を展開しているファーストフード店です。私自身も出張に行くと食べていたりするお気に入りチェーンです。
戦略としてのデジタルへの取り組み
直近、デジタル戦略としてアニュアルレポートなどで語っている部分は見つけることが出来なかったのですが、2019年のアニュアルレポートで5つの基本戦略として掲げられている部分にデジタルも含まれています。
- Making the brand more visible and loved
認知度を高め愛されるブランドへ - Creating innovation utilizing a stage-gate process
ステージゲート法を活用したイノベーションの創出 - Leveraging our digital-make line to expand access and convenience
デジタルメイクラインを活用し、アクセスと利便性を拡大 - Engaging with customers through our loyalty program
ロイヤリティ・プログラムを通じた顧客とのエンゲージメント - running successful restaurants with a strong culture that provides great food, hospitality, throughput, and economics
素晴らしい料理、ホスピタリティ、生産性、経済性を提供する強い文化を持つレストランを成功させること
この後それぞれ触れていきますが、デジタルの取り組みとしては3と4が特に大きく関わってくる感じになります。
2021年の数字ですが、デジタルを通じた売上は20億ドルとなり、全体の売上の48.5%がデジタルチャネル経由で売り上げているとのことです。ちなみにこのデジタルチャネルとはウェブサイト、アプリ、外部配送業者(Door DashやUberなど)が含まれます。
リーワードプログラム
Chipotleはリワードプログラムにかなり力を入れているのが色々な事例からも大きく見えてきています。先ほどの基本戦略の4にも触れられているところでもありますしね。
2017年にアプリをリニューアルリリースしているのですが、このアプリでリワードプログラムの管理ができるようになっており、ポイント管理、来店時のスキャン(来店ポイント)なども出来るようになっています。
このリワードプログラムですが、いわゆるクーポンなどはもちろんのこと、ゲーミフィケーションの要素もふんだんに組み込まれています。一番はバッジ獲得です。
Chipotle Mexican Grill — Daniel Romero
来店頻度、注文したカスタマイズメニューの内容、1年のお祝いなど様々な条件でバッジが獲得できるようになっており、デザインもかわいらしくついつい集めたくなってしまう感じです。Redditにもこのバッジのスレッドた立っていることもあり非常に人気のようです。
また、バッジだけでなく、過去の注文により例えばアボカド好きといったことが分かると、専門農家からThank youメッセージが届くといった取り組みもありエンゲージメントを高める面白い取り組みになっています。(これもバッジがもらえるっぽい)
また、恒常的に実施しているかは不明ですが面白い取り組みとしてメールプロモーションとして「Chipotle Doppelgänger」というのを実施していました。Chipotleはメニューは50種類程度ですが、カスタマイズ性が高いので、それを利用し「同じタイミング、同じメニュー、カスタマイズ」で購買した人がいた場合に<ドッペルゲンガーがいたよ!>と告知するプロモーションです。
これはまた行ってみようかな、となるプロモーションですよね。ちなみ最初の4週間で46万通のドッペルゲンガーメールを配信し(結構ある)、クリック率はベンチマークよりも176%向上、メールからの売上は4億8000万円以上だったそうです。
アプリの活用
このリワードプログラムの鍵ともなっているのがアプリです。先ほど触れた通り2017年にリニューアルリリースして以来かなり利用者を増やしているそうですが、リワードプログラムの管理以外に、モバイルから購入ができるというところが大きなポイントになります。
店頭のやり取りでカスタマイズしていくのも楽しいですが、アプリで自分好みのカスタマイズを楽しめるのも良いですよね。オンライン限定メニューもあるそうで、そういう意味でもアプリを使いたくなります。
そしてオンライン注文のもう1つのメリットは店舗に行った際に受けとりに時間をかけなくて良いというものです。オンライン比率の高いChipotleの店舗では、Mobile Order専用のピックアップレーンがあり、そこで受け取りが出来るようになっています。
また、2021年の取り組みなので現状どの程度展開しているかは不明ですがDigital Kitchenと呼ばれる、店頭注文なしでオンラインの受け取りだけを行う店舗も展開しはじめています。より狭い面積で店舗が展開できるようになるのがポイントのようです。この辺りの取り組みが冒頭の5つの基本戦略の3にあたるあたりですね。
位置情報の活用
2022年にテストを開始し、2023年1月から正式リリースされたのがアプリの位置情報を活用したコミュニケーションです。Contextual Restaurant ExperienceとChipotleのニュースリリースでは触れられていましたが、より顧客の状況を理解しながらコミュニケーションをしていこうというものです。
具体的には下記のようなコミュニケーションを位置情報を活用し行っているそうです。
- 注文準備のメッセージ
- 間違った受け取り場所の検出
- チェックアウト時にチポトレリワードプログラムのQRコードスキャンのリマインド
注文準備などは最近は実施しているところも多くなってきているようですが、間違った受け取り場所については、多くの店舗を展開しているからこその取り組みな感じもします。
最後のチェックアウト時のQRコードスキャンについては位置情報なくても出来そうですし、なんだったら店舗受け取り完了でポイント付けてほしいな、、、と思ったり。
ちなみにこれらの位置情報を活用したコミュニケーションはオプトインしたユーザーのみに提供とのことで、誰でも勝手に位置情報を活用されるわけではないです。(そもそもアプリの位置情報活用は承認が必要ですし)
CHIPOTLE PILOTS ADVANCED TECHNOLOGY TO ENHANCE THE EMPLOYEE AND GUEST EXPERIENCE – Sep 27, 2022
まとめ
ざっと気になった部分を触れてみました。このようなカジュアルレストランは、デジタルの活用をどうするの?になってしまいがちな気がしますが、リワードプログラムなどアプリを中心に非情にうまく設計されていっているのかなと思います。
実際にデータの取得と活用はかなり注力しているようで、どうしたらパーソナライズされた体験を提供していけるかなどをかなり投資をしているようです。
また、今回のテーマ外なのであまり触れていないですが、Chipotleは食事を作る部分もかなりをオートメーション化していっているようです。
手元ではより細かく顧客体験の設計と照らし合わせたものも作成していますので、もし詳細にもご興味がある方は是非お問い合わせください。