事例から見るApple Vision Proのコマースへの期待
Apple Vision Proの使ってみた祭りが終わり、色々な使い方が出てきた中でもちろん様々なアプリもリリースされてきています。Obsessの調査によると仮想店舗(Virtual Store)に投資しているブランドはその後88%も売上げが向上しているとか。また、これまでのコマースサイトに比べて最大10倍のセッション時間となっているそうです。(Immersive Experiences in Retail Insights)
残念ながらApple Vision Proを私自身は持っていないのですが、そんな中でも様々なレビューやアプリのリリースを見て、今後のコマースへの期待を整理してみました。
J.Crewの世界感とペルソナ機能
まず、代表的なリリースされているアプリをいくつか見ていきましょう。最初はJ.Crewです。J.Crewの世界感の中でブラウジングをしながら商品を確認していくことが出来るようになっています。
ここまでだとVRでも良いじゃんというところですが、動画の後半にあるリアルタイムなスタイリストとのコミュニケーションというところもポイントです。
Vision Proのペルソナ機能を利用しながらスタイリストと相談をしながら決めていくことが出来るという部分はこれまでのVRの体験でも難しく、またPCやスマートフォンでの体験でもあまり無かった部分でしょう。
LOWE’Sによる実物大ウォークスルー
住宅のリフォームや生活家電を提供するLOWE’Sでもアプリをリリースしています。動画をみて頂くと非常にイメージがつきやすいですが、キッチンなど大型のものを見ていくのにその中をウォークスルーしていくことが出来るようになります。これで大きさや質感などをしっかりと確認していくことが出来るようになります。
ぜひ動画をTikTokで見てみてください。かなりイメージが沸くと思います。Aplicativo da Lowe’s pro Apple Vision Pro. Uma tecnologia sensacional … | TikTok
StockXによる店舗感
StockXでは実店舗のように靴棚を表示して、そこから手に取るようにスニーカーを取り出し、確認していくことが可能です。ひっくり返してソールなども見られるので、自宅のソファーでゆったりしながら細かいところもまで確認し、かつスニーカーの細かい情報も確認しながら購買を行うことが可能です。
StockX in Apple Vision Pro #applevisionpro #stockx #sneaker – YouTube
店舗とオンラインの間
3つほどご紹介をしましたが、Apple Vision Proを通して実現するコマースとしてこれから期待できるのは店舗とオンラインの間なのではないかなと感じています。
コロナ以降、店舗ではより店舗らしい体験を提供できるもの、例えば実物での確認や試し履きが出来るといったことがあり、オンラインでは検索する、比較するといったところが得意であるそこが重要視されてきました。
Vision Proを通して見えるコマースの世界は、オンラインでありながらも実物確認に近い状態を提供することが出来ることにあるかなと思います。
StockXのように靴の棚を表示し確認することも、LOWE’Sのように実際にリフォームに伴うウォークスルーが出来ることなどは店舗の体験には及ばないもののとはいえ近い体験を提供することが出来ます。
また、J.Crewのようにペルソナ機能を利用しコミュニケーションをリアルに行うことも出来るようにしいくことで、チャットではなく店員とのコミュニケーションに近いものを提供することが出来るようになります。
ゲーミフィケーションへの期待
もう1つ私が期待したいのがゲーミフィケーションへの期待です。これは1つのXのPostによるものから感じたものですが、この動画は自分のリアルの空間にゲーミフィケーションを取り入れることが出来るようにしているものです。
自分のいるスペースを認識し、そこに新たな価値を付けることができるのもVision Proの大きなメリットと言えます。その中でこのようなゲーミフィケーションを取り込むことは非常に面白いアイデアの1つです。
これをブランドがどう使うか、というところはありますが、ブランドの世界感を伝えていくことが、JCrewのようにその空間に入れてしまうことも1つのアプローチですが、顧客の空間にそのブランドの世界感を作っていくようなことも出来るようになるのではないでしょうか。
そこにゲーミフィケーション的な要素を入れたり、空間的な雰囲気を作るなど面白いものが出てくると良いなと思っています。
課題
さて、未来的なものを書いていったものの現状において課題もあります。パッと考えられるポイントとしては大きくは2つあるかなと感じています。
- そもそもデバイスが高い問題
- 3Dモデルの質をどれだけ上げられるか
そもそものデバイスが高価であることに関しては、現状しょうがない部分かと思っていますが、これはテクノロジーの進歩により必ず価格は下がってくるものになると思います。とはいえの価格帯はあると思いますが、この辺りは富裕層を中心にしたブランドであれば特に気にする必要はないかもしれません。
もう1つが3Dモデルの質です。商品をどれだけリアルに見せることができるか?はより店舗に近い体験を提供していく中で重要なポイントになります。その上でベースとなる3Dモデルをどれだけリアルに作っていけるか、というところがポイントになります。
これまでも既に3Dを展開していた企業であればすぐに参入できるポイントになりますが、一方でこれまでは写真で済ませていた、、、というところであればこの部分は1つの大きなハードルになる可能性があります。
まとめ
ということで直近でてきていたいくつかのコマースアプリを触れつつ、今後のApple Vision Proが提供するコマースというところについて考えてみました。これがスタンダードになるか?と言えば恐らくならない可能性の方が高い感じもします。これはApple Vision Proでしか提供できない体験になってしまっているところもあるからです。ここがクロスプラットフォームで似たような体験を同じソースのまま提供できるようになればかなり普及は進むような気もしないではないです。
とはいえやはりワクワクという部分では非常に大きいので、費用対効果という数字だけに負けず、この領域について色々な企業さんが参入し盛り上がっていくと良いなと思います。