Bank of Americaのデジタルを利用した顧客体験への取り組み

金融機関のデジタルへの取り組みについて色々と調べていたので、今回はBank of Americaのデジタルを通した顧客体験への取り組みについて整理をしてみます。ちなみにBank of Americaは総資産でUSで2位(2023年現在)であり、US国内において約500支店を展開しています。また、2023年にEuromoneyにおいて世界で最も優れた銀行と賞されています。ちなみにBank of Americaは長いので、この後はBofAと記載します。

デジタルへの投資

2021年と少し古いですがBarclays Global Financial Services Conferenceにて、BofAはデジタルへの投資について大きく3つのポイントを触れています。

1:ビジネスをより簡単に
「ビジネスのしやすさ」と「リレーションシップ・マネジメント」が依然として最も重要な推進力となっている。

2:製品をより簡単に
「ビジネスのしやすさ」と「リレーションシップ・マネジメント」が依然として最も重要な推進力となっている。

3:アドバイザリーの強化
企業は、リスク管理、商品、市場、経済、財政政策などに関するリアルタイムなインサイトを求めている。

直近の数年はこれらに基づいて色々なアプローチも実施されているような形になってきているようなので、その中でもハイライトになる3つについて触れていきます。

LifePlanアプリ

これはコンシューマー向けにリリースされているアプリになっており、お金のための計画を立てるためのサポートアプリとなっています。口座と連携し、その名の通り、出産や家を買うといったライフプランに対してファイナンスに関するアドバイスを行ってくれるものとなっています。

利用者が選択したゴールに対して、動画やサポートツール、読み物コンテンツ、チェックリストなどを提供しその達成をサポートするようなサービスとなっており、パーソナライズされた顧客体験を提供することが可能になっています。

2020年にリリースされ、2023年3月発表時点(リリースから2年後)で1000万人を越えるユーザーが利用し、550億ドル以上をBofAの口座に追加されているそうです。

これまで銀行は、振込、預金といったトランザクションだけが接点となっていたところに、このアプリを利用することでユーザーは本来のその目的に立ち返りながら自身のファイナンス状況を考えていくことが出来るようになっています。

また、銀行側からするとそれぞれに意味が付いていなかったトランザクションに対してコンテクスト情報を知ることが出来るようになるため、さらなる顧客の理解とそこからの顧客体験の提供ができるようになっています。

Over 10 Million BofA Clients Use Life Plan to Pursue Financial Goals Through Personalized Digital Experience | Press Releases | Newsroom | Bank of America

AIアシスタントErica

ChatGPTなどが流行る前からBofAはAIアシスタントに投資を行っています。Ericaと呼ばれるもので、元々はLifePlanアプリよりも早い2018年にリリースされ、現在はLifePlanアプリとも統合しているようです。

単純なチャットアプリとは異なり、口座と連携し様々なコミュニケーションや情報の確認を行うことが可能になっています。口座情報の取得から、取引状況、一時的なアカウントのロックなど様々な事をサポート。2023年7月には利用者は3700万人を越え、15億件のインタラクション、合計100万時間以上利用されているそうです。

個人的にはこのインタラクションにフォーカスしていることにも注目で、各期の報告にもインタラクション量がKPIとして掲載されています。このインタラクション量が利用者あたりで増えていくことで、BofAと顧客エンゲージメントはさらに高まることになり、かつ、その情報も増えていくことになるということで、このインタラクションをKPIにしているのは非常に面白いポイントだと感じます。

そしてもちろんAIベースでのコミュニケーションが出来るようになることで、店舗に来なくても簡単なやりとりであれば簡潔させることが出来るようになり、顧客体験の向上に繋げることが出来るようになります。AIのチャットになることで、これまで対面だったら聞かなかった細かいことでも、聞いてしまえるのは実は体験を左右する大きなポイントかもしれません。

BofA’s Erica Surpasses 1.5 Billion Client Interactions, Totaling More Than 10 Million Hours of Conversations | Press Releases | Newsroom | Bank of America

CashProによるB2Bサポート

ここまではB2Cのものについて触れましたが、B2Bについても様々なサポートを行っています。その中心となるのがCashProです。このサービス自体は非常に古くからあるようで、オンライン版がリリースされたのが2009年になっています。

企業に向けた取引の管理を行うことをメインとしたサービスになっており、様々な取引管理をこのアプリを通して行うことが出来るようになっています。機能も追加アップデートしながら現状では様々な事ができるようになってきています。

直近では2023年にコンシューマー向けに提供していたEricaと同じテクノロジーを利用したものをCashPro内のチャットにも対応できるようにし「支払いの締め切り時間は?」「サンパウロにいるサプライヤーに外国為替支払いをするにはどうすればいいですか?」といった様々な疑問にチャットベースで答えることが出来るようになっています。

Enhancements to BofA’s CashPro® Chat Create Greater Efficiencies for Business Clients | Press Releases | Newsroom | Bank of America

まとめ

ざっと大きくポイントとなっているところについて触れてみましたが、他にもB2C向けに個人間のお金のやりとりより簡単に実現するZelle、サービスやポイントを3rd Partyの企業と連携するBankAmeriDeals、CashProでのAPI提供などなど色々なものを展開していっているBofAです。

あ、もう1つリアルタイムに顧客のフィードバックを社内に展開するVoicesというものもあるそうです。これ自体はISVが関わっているようですが、とはいえリアルタイムに対面する顧客担当に加えて製品担当などもそのフィードバックが見られるようになっているのは非常に良い取り組みかなと思います。

調べてみて改めて感じたのは非常に多くの投資をしているものの、一方で最近の国内の銀行も負けないぐらいの取り組みなのかなと思っています。この辺りはまた機会があれば触れてみます。

手元ではより細かく顧客体験の設計と照らし合わせたものも作成していますので、もし詳細にもご興味がある方は是非お問い合わせください。

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