もし取説がなかったら…から考える 製品情報 と 顧客体験 のこれから
先日、JTCA(TC協会)が主催するCDシンポジウムにて、「もし取説がなかったら… 製品情報の新しい伝えかた」というテーマでトークセッションに参加させて頂きました。一方的な情報の提供から、顧客視点で考えていくということもあり、トリセツを通して改めて 顧客体験 を考える良いセッションでした。少しだけ、その内容をフォローアップしたいと思います。
トリセツの位置づけ
今回は<トリセツと呼ばれる紙やPDFのマニュアルが無くなったら?>というテーマだったので、振り切った形でそれが無くなった場合について色々と事前に検討をしてみました。実際に、顧客起点で考えていくと、まとまったマニュアルというのは、読み解くのが大変な時もあり、必要な時には少し情報量が多いものになってしまいます。
「必要なタイミングで必要な情報を」というのが、実はトリセツの世界では、本来求められることなのかなと思います。結局のところ、トリセツで整理されている情報は、もう少し大きく見れば購買後の顧客体験をどう作っていくかの大きな根幹になっていると思います。
特に、現状のようにiPhoneが切り開き、今では車のTeslaも実施されるOSがアップデートにより機能が追加されていく世界であったり、サブスクリプションが当たり前であったりの状況においては、製品が発売されたタイミングで用意されたトリセツでは、機能アップデートはまかなえなくなってしまいます。
そんな中での、購買後の体験をどう作っていくか、機能アップデートにどう対応していくかなどは、実はトリセツの今後のあり方とも密接になってきているわけです。
とはいえ全ての製品ではない
今回、このテーマを頂き事前に整理をする中で、とはいえ全ての製品で細かいコミュニケーションではないな、と改めて感じました。製品やサービスの形態によりその内容は大きく変わるのではないかと思います。
こちらは対象機器の複雑さと活用の幅広さでざっくり4象限に分けたものですが、toC、toBいずれの製品であれ対象機器が複雑であり、活用の幅も幅広いものは購買後のサポートは大きく必要になるものとなります。当日のセッションでも触れましたが、カメラなどは分かり易いかなと思います。
一方で、活用の複雑さがそれほどないもの、単機能になればなるほど購買後の説明やサポートはそれほど必要ではなく、それこそトリセツさへも薄いものになるのでそれほど事後のコミュニケーションに力を入れるものでもないような感じです。
左上になる複雑だけども、活用の幅広さはそれほど大きくないものについては、利用者へのガイドは必要ではあるものの、その都度利用方法が分かれば良い、最初に伝えればだいたい分かるといった感じのサポートで良いのではないかと思います。
これまで、トリセツの未来として何度かお話しをさせて頂いたのですが、商材によりこのサポートが違うというのは、今後のコミュニケーション設計の中でも改めて重要なポイントになるのではないかと思います。
コミュニケーションのパターン
では、特に4象限の上部のものについてはどのようなコミュニケーションが必要かというと大きく2つに分かれてくる、もしくはそれを組み合わせて提供していくことになるんではないかと思っています。
1つが、顧客が必要なタイミングに必要な情報だけ的確にアクセスできるようにするものです。トリセツを上から順番に目次から辿っていくのではなく、実施したい目的を達成するサポートする情報だけを提供する感じです。
もう1つが、理解しやすいように階段を作るようにすることです。利用者側の成長が必要な製品もあるかと思います。その場合は、階段を用意し、適切なボリュームで提供していくことで、その成長を促していくような感じです。
セッションでも例にあがった製品の例を挙げると、コピー機であればコピーやスキャン、プリントアウトという目的が明確なので、それに必要な情報を適切なタイミングで提供出来れば良いので、全社の方になるかと思います。
一方で、カメラであればその人のスキルなどにより、情報の受け取り方は変わってきます。初心者の方がいきなり「F値について」と言われても恐らく分からないでしょう。ある程度、撮影についての知識などが付いてきてから伝えないと意味がありません。ただし、理解するととても有用な話になってくるわけです。
コンテクストを知る
この製品ごとに方向性が見えてくると、実際のコミュニケーションになってくるわけですが、上記のどちらのアプローチであれ、コンテクストを知らないと必要な情報を提供できないわけです。ここでIntent情報、つまりその人の興味を判断する方法が必要になってきます。
以前よりもデータとして取得しやすくなったのが、ここ最近の傾向かと思います。
- IoTにより製品そのものから取得
- 利用ソフトウェア・アプリから取得
- 連携アプリから取得
このような手法によりデータとして取得が可能です。この辺りはいずれにせよ製品設計と密接に関わることになりますが、その分、様々な体験へのフィードバック、次の製品開発に向けたデータ取得なども可能なため検討の余地があるかと思います。
ここで取得されたデータにより、どんな機能を利用しているのか、どんな頻度で利用しているのか、場合によっては誰が利用しているのか、などが分かってくるとその人にどんな情報を提供していくかが想定しやすくなってくると思います。(もちろん分析も必要ですが、、)
そしてこれらのデータ活用はサポートコンテンツだけではなく、様々なパーソナライズされた顧客体験、製品のパーソナライズにも役立てていくことが可能になります。
その他のサポート方法
上記の直接的なサポートの他にも、セッションに向けて様々なサポート方法について今回は調査を行っていました。この辺りのあり方については、ぜひお問い合わせ頂ければと思います。下記はその一例です。
トリセツも 顧客体験 が重要
テクニカルコミュニケーションというのがマニュアルを作るというところから、製品の活用をサポートしていくというところになってきている一方、顧客と製品のコミュニケーションのあり方もインターネットやIoTの普及によって大きく変わってきています。
今回、私自身もセッションに向けて改めて整理をし直すことで、製品ごとに適切なコミュニケーションの手法が異なることを改めて感じました。だからこそ 顧客体験 を通して、その設計をするテクニカルコミュニケーターの存在価値が大きくなってきているのだと思います。