社内におけるデジタル活用を、上からの指示ではなく現場から自走する形で育てていく──そんな取り組みに挑んでいるのが、株式会社フェリシモです。定期的な勉強会「GO! WEB」によってどのように現場のマインドが育ち、変わっていったのか、実際に取り組まれている方々にお話をお伺いしました。

今回、お話しをお伺いした方
- 株式会社フェリシモCXD部 副部長 西本 宗平様(写真右)
- 株式会社フェリシモCXD部サービス改善G 係長 畑 洋子様(写真中央)
- 株式会社フェリシモファッションMC統括グループ WEB企画・販売グループ 三木 朝美様(写真左)
※ 所属・役職は取材時点のもの
事業について
安西:それではまず貴社の事業についてお伺いさせてください。
西本:弊社はファッション、雑貨、インナーなどを主に扱う、設立60期のダイレクトマーケティングの会社です。カタログやECを活用したこれら商品の定期便事業を展開しています。最近では、新規事業としてレストラン事業、ミュージアム事業のほか、これまで培ってきた商品企画や物流の仕組みを外部に提供する事業も行っています。また、神戸ポートタワーの運営権を獲得し、今後15年間にわたって運営する予定です。この会社において私は定期便事業のEC領域を見ています。
三木:私はEC事業の中で特にファッション領域を担当しており「THREE FIFTY STANDARD」というブランドとファッション記事メディア「Niau(ニアウ)」の担当をしています。
畑:私はウェブの横断チームに所属して基盤全体を担当しています。三木などのブランド担当者と協力しながら、ウェブディレクターとしてUI・UXの設計や、LINEとアプリ、メールといったデジタルチャネルの活用を推進しています。
Go Web!という社内プロジェクト

西本 宗平様
安西:現在、貴社では社内プロジェクトとして「GO! WEB 」(みんなでGO! GO! WEB Marketing)という取り組みを実施されています。まず、この取り組みについて教えてください。
西本:「GO! WEB」は社内のメンバーのデジタル戦力強化を目的として生まれたプログラムです。月2回の勉強会を継続的に開催し、部門を横断して社員のスキル向上を図っています。もともと大規模リニューアルの実施後に「サイトが変わっても人も変わらなければ意味がない」と考え、始めたのがこの取り組みのきっかけです。
安西:これまでも同様の取り組みはあったのでしょうか?
西本:単発の社内勉強会はありましたが、継続的な取り組みとしては「GO! WEB」が初めてです。この「GO! WEB」では若手メンバーに重点を置き、少人数で深く学べる場を設けました。今後の会社の成長を支える人材を育成するための場として位置付けています。
安西:実際に参加してみて、どのように感じましたか?
畑:私は西本の直属の部下としてこれまでも様々な話を聞いて学んできました。「GO! WEB」を通して、デジタルに携わるより多くの社内メンバーがしっかりと時間を確保され、学ぶ場ができたことが何より嬉しかったです。
また、自分自身も横断的な役割を担っているものの、普段コミュニケーションする方は限られてしまっていたので、部署を超えた交流や共有が増えることもワクワクしていました。
三木:これまでも単発的な勉強会や、ツールの社内展開などはありましたが、実際には手元の仕事に追われてしまい時間が取れていなかったのが実情でした。「GO! WEB」を通して、実際に活用できる機会が増えたことが大きなメリットだと感じています。
安西:横断的、かつ、継続的な勉強会の取り組みとして「GO! WEB」は非常に良い取り組みになっていたと改めて感じます。
Nudge Experienceの参画
安西:「GO! WEB」がある程度進んだ段階で、弊社が参画することになりました。その経緯について教えてください。
西本:「GO! WEB」を通じて、参加メンバーのツールの使い方はある程度理解が進みました。しかし、ある程度皆の理解が進んできたことで、考え方や実践的な活用など、セッションにより深みをつけたいと感じていました。そんな中、Nudge Experienceの話を聞き、「これはぜひお願いしたい」と思いました。実は10年以上前から安西さんの勉強会に参加していたこともあり、以前からその視点や考え方に共感していたんです。

サービス改善G係長 畑 洋子様
畑:もともと西本から安西さんの話を聞いていたのですが、実際に「アクセス解析マインド」のセッションを受けた際、すぐに引き込まれました。「概要数字」「現状把握と課題分析の違い」などセッションで触れられていた様々な考え方は非常に納得感があり、セッション終了直後から使い始めて、広めていこうとしています(笑)。
さらに、Nudge Experienceのセッションを受けたことで、「GO! WEB」のメンバー間で共通言語が生まれ、業務の中でのコミュニケーションが円滑になったのも大きな変化です。
三木:参加前は、日々の業務に追われ、データを活用する余裕がほとんどありませんでした。しかし、Nudge Experienceのセッションを通じて、データを仮説ベースで分析する習慣が身につき、「以前は何をやっていたんだろう?」と思うほどでした。
これまで、運用の意思決定は過去の踏襲が中心でしたが、セッションを通じて「数字を見ながら仮説を立て、新しい施策を実行する」という流れを実践できるようになりました。
西本:私から見ても、「GO! WEB」のメンバーが日々の運用を単なる作業としてではなく、考えながら進められるようになったと感じます。この変化は、組織として非常に重要なことだと思っています。
畑:また、チームで行う確認作業でも「なぜこのデータを見るのか」という目的意識が生まれ、効果的にツールを活用できるようになりました。セッションを通じて得た新しい視点が、業務の「武器」として機能するようになったと思います。
短期的には、これまであまり考えずに進めていた作業が、「考えながら行う」ことに変わったため、工数が増えた部分もありました。しかし、中長期的には、仕事の質が向上し、最終的には業務効率の向上にもつながると考えています。
三木:例えば、私が運用しているメディアサイトでは、これまで「記事を作成する」ことが主目的でした。しかし、今では「どのように記事を見せるか」「どの導線が最適か」を考えながら運用するようになり、まさに業務の質が大きく変わりました。
今後に向けて
安西:「GO! WEB」を通じて、様々な変化があったと思います。今後の展望についてお聞かせください。

ファッションMC統括グループ WEB企画・販売グループ 三木 朝美様
三木:私はファッション領域で唯一「GO! WEB」に参加していたメンバーなので、学んだことをファッション領域の他のメンバーにも伝えていきたいと考えています。
データを可視化し、分析できる環境を整えても、実際に活用できるかどうかは個々のスキルや意識による部分が大きいです。だからこそ、学んだことを共有し、チーム全体で仮説検証の精度を上げていきたいです。そうすることで、ビジネスの数字にもより深く踏み込めるようになり、仕事の楽しさも広がると考えています。
畑:私が今後取り組みたいことは2つあります。1つ目は、学んだことをさらに実践し、深めていくことです。まだまだ十分に活用しきれていない部分もあるため、自分自身のスキルを高めながら、社内にも広めていきたいです。
2つ目は、AIの活用です。データを分析する力がついたからこそ、次のステップとしてAIをどう業務に活かせるかを考えたいと思っています。例えば、AIを活用したパーソナライズや、戦略的な設計のサポートなど、より高度なマーケティングが可能になるのではないかと考えています。
西本:「GO! WEB」は現在、第1期のメンバーから第2期のメンバーに移行しました。しかし、その学びやマインドは確実に社内に根付いていると感じています。会社の成長の大元には「人の成長」があります。私は、社員がスキルを磨き、それを次の世代へ伝えていく文化を作ることが、企業の持続的な発展につながると考えています。
そのためにも、今回「GO! WEB」で得た知識や経験を、より多くのメンバーに広め、継続的に成長できる組織づくりを進めていきたいです。
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現場の一人ひとりが「考えて動く」力を身につけることが、組織全体の変革につながる。その確かな手応えを、今回のインタビューを通じて感じました。今回の取り組みが、さらに次の実践につながっていくことを楽しみにしています。